第1章 Trauma
「ねぇ、智くん?」
翔くんが目を細め、俺の顔を覗き込む。
「あのさ、言いたくなければ別にいいんだけどさ、そろそろ話してくれないかな、智くんが何故そこまでクリスマスに対して嫌悪感を抱いているのか…」
真っ直ぐな彼の視線から逃れることが出来ず、俺の瞳から止まった筈の涙が一筋零れた。
毎年この時期になると、精神的に不安定になる俺を、翔くんはまるで母ちゃんみたいに優しく受け止めてくれている。
受け入れられないのは俺の方…
翔くんと付き合い始めて5年になるのに、未だにキス以上の関係を拒み続けている。
翔くんがたまに一人で処理してることを、俺だって気付いてないわけじゃない。
これじゃまるで翔くんの、俺に対する気持ちを弄んでるのと同じじゃないか…
「ねぇ、翔くん? どんな俺を知っても、俺のこと嫌いになったりしない?」
一瞬翔くんの瞳が、驚いたように見開かれたが、その目は真っ直ぐ俺の瞳を見据えた。
「当たり前じゃん! 俺が智くんを嫌ったりなんか出来ると思うの? 俺のこと信じてよ」
そうだ、翔くんなら…
翔くんだから…
「手、繋いでてくれる?」
「うん、おいで」
翔くんはベッドヘッドに凭れると、俺の身体を後ろから抱き寄せた。
背中から回された手が、俺の両手をしかっり握った。
「俺まだ子供の頃ね…」
大きく深呼吸をして俺はゆっくり口を開いた。