第1章 Trauma
「もう大丈夫そうだね」
翔くんの胸に埋めた俺の顔を両手で包むように上向かせると、汗で額に張り付いた髪を掻き分けながら、そこに一つキスをくれる。
「ごめん…。起こしちゃったね…」
申し訳なさに視線を落とすと、翔くんのスウェットには自分が流した涙が幾つもの染みを作っていた。
その部分を指先で触れると、翔くんが擽ったそうに身を捩った。
「濡らしちゃったし…」
「すぐ乾くから」
クスッと笑うと、まだ涙で濡れた頬を指の腹で拭ってくれた。
「ごめんね、翔くん…。なんか、この時期やっぱり駄目みたいだ、俺…」
そう、町もネオンで彩られ、陽気なクリスマスソングが鳴り響く。
TVだってそうだ。
どこもクリスマスの企画物で構成されていている。
そんなクリスマスムードで溢れたこの季節が、俺は嫌いだ。