第3章 聖なる夜に
翔side
「別れるつもりはないよ」
肩越しに囁く。
「えっ…だって…」
驚いたように顔を上げた智くん。
視線がぶつかった。
暫くの間お互い視線を逸らすことができないまま見つめ合った。
そんな状況に先に耐えられなくなったのは、智くんだった。
「今のまま付き合ってても、俺は翔くんの気持ちに応えらんねぇかもしれないよ?
そんなの生殺しじゃん?
俺だったら…耐えらんないよ…そんなの…」
まただ…
この期に及んで俺の心配ばかり…
あんたって人はいったいどこまで優しいの?
「俺のこと、見くびらないでよ…」
思わず口をついて出た言葉。
視線を絡めたままで、智くんの身体をが離れると、向い合わせの状態になった。
戸惑いがちに伸ばされた手が暫く宙をさまよっていたが、それが俺に触れることはなかった。
深い溜め息と共に俯いてしまった彼の顔に手を添え、上向かせる。
再び視線がぶつかる。
俺は智くんの唇に、自分のそれを押し付けた。
僅かに出来た隙間から、少々強引に舌先を忍び込ませた。
「…ん…ふっ…ん…」
息苦しさからなのか、智くんの唇の端から吐息が漏れる。
貪るように彼の唇を吸い、乱暴なまでに舌を絡めた。
智くん身体から力が抜けていく…
「俺があんたのサンタクロースになる!」
冗談を言ったつもりでも、ふざけているわけでもなく、俺は本気でそう思っていた。