第3章 聖なる夜に
智side
「俺だったらあなたに怖い思いさせたりしない。
あなたが…智くんが苦しむようなこと絶対にはしないよ?…だから信じて、俺を…」
そう言った彼の頬を、一筋の涙が伝う。
俺でいいの?
翔くんの隣にいてもいいの?
思いが上手く言葉に出きなくって、堪らず翔くんの胸に顔を埋めて声を上げて泣いた。
まるで子供のように…
翔くんは子供をあやすように、頭を撫で、背中を擦ってくれた。
一頻り泣いた後、顔を上げると、翔くんが俺の顔を指差し笑った。
「ヴィジュアルぐちゃぐちゃだよ」
「翔くん、ひどい…」
唇を尖らせ、膨れて見せ、彼の肩を一つ小突いてやった。
翔くんの顔だって、相当ぐちゃぐちゃなんだけど…
お互いぐちゃぐちゃの顔のまま、唇を重ねた。
さっきまでとは違って、今度は優しい…甘いキスだった。
「翔くん…俺さ、わかんないけど…また途中で逃げたしちゃうかもしんないけど…翔くんに抱いて欲しい…」
言いながら、全身の血液が顔に集まってくるのを感じた。
翔くんからの返事はない。
でも、見上げた彼の顔は、俺同様真っ赤だった。