第2章 優しい悪魔
どれくらいの時間眠っていたんだろう…
ゆっくり瞼を開く。
すっかり日も落ちていた。
痛む身体を無理矢理起こし、僅かに差し込む月明かりを頼りに、散らばった服をかき集めた。
男の吐き出した欲だろう…胸の辺りがベタベタして気持ち悪かったが、お構い無しにセーターに袖を通した。
足首に無様に絡み付いた下着と半ズボンを引き上げようとしたとき、後ろの方にピリピリとした痛みを感じた。
重い身体を引き摺りながら社殿を出ると、放り出されたままのリュックを背中に背負った。
ふと視線を賽銭箱に向けると、そこに一冊のノートが引っ掛かっていた。
ノート手に取ると、ページを捲った。
そこに描かれた絵を見た瞬間、思い出したんだ。
友達との約束を…
あんなに楽しみにしていた筈なのに…
似顔絵だって、一生懸命描いた…
あ、ブツブツ文句言いながらも焼いてくれた、母ちゃん特製のクッキー…
全てが無駄になってしまった…