第2章 優しい悪魔
「サンタさんだー!」
思わず駆け寄り、隣にちょこんと腰を下ろすと、その姿をまじまじと見つめた。
絵本や物語の中で見るサンタクロースよりも、若干細身ではあったが、赤い服に赤いトンガリ帽子、口許には白く長い髭を蓄えたその姿は、正しくサンタクロースだった。
「サンタさん、こんなトコで何してるの?」
問い掛けには応えず、腰に巻いたウェストポーチから煙草を一本取り出すと、ライターで火を点けた。
「サンタさんもタバコ吸うんだ…」
白い髭の隙間から煙を吐き出すサンタクロースに、違和感を感じなかった訳じゃないけど、そんなことその時の俺には関係なかった。
「あっ、そうだ!」
何かを思いつき、手を一つ叩くと、背中に背負っていたリュックから、ノートと鉛筆を取り出した。
ノートの白いページを開き、そこに夢中で鉛筆を走らせた。
もう友達との約束なんて、すっかり忘れていた。
トンガリ帽子と髭の間から垣間見られる視線が、鉛筆を持つ手元ではなく、真冬にも関わらず半ズボンで剥き出しになった俺の太股に注がれていたことにも気付けずに…