第1章 その1
始まった。
こうなって、余裕しゃくしゃくな渉の腕の中でジタバタする私を、
彼は可愛いと笑う。この一連の流れがお決まり。
「右腕を…右腕をまず外して…!」
「がんばれ!がんばれマイコ!もうちょっとで右腕外れそう!」
「もー!渉のさじ加減でしょうがー!!」
「あははは!可愛い!がんばれ!」
いつもいつもこう。余裕かましてさ!
でも今日の私は少し違う。
ちょっとしたイタズラを、ピーンと思い付いてしまった。
私は渉の腕の中で クルッと半回転。
近い近い距離で、渉と向き合う形だ。
「お?どうする?」
「ふっふっふっ… こちょこちょこちょこちょ!!!」
そう、くすぐる作戦!
きっと力が抜けて、助けを乞うは…ず…