第1章 Re・Birth
震える翔を抱えて、タクシーに揺られた。
その間ずっと背中をさすり続けた。
家の近くで降りると、翔は俺の手をまた、ぎゅっと握った。
「大丈夫だよ、翔。俺の家にいくだけだから…」
「うん…」
こくりと頷くと、また手に力が入った。
そのまま手を引いて家に帰る。
ボロアパートの鍵を開けると、翔を中に入れた。
「ほら、おじさん居ないだろ?安心しろよ?」
「うん…かず…」
また翔は俺に抱きついてきた。
俺より身長あるから、退けることもできない。
「ん…なんだよ…翔…?」
「ありあとう…かずくん…」
にっこり微笑むと、翔はそのまま俺に倒れこんできた。
「わっ…」
崩れ落ちる身体をなんとか支えた。
そのまま抱きしめて、床に座り込んだ。
翔の手首…
誰がこんなこと…
そっと頬を撫でると、安心しきったように翔が微笑む。
「かずくん…だいすき…」
「えっ…?」
「だいすき…」
翔は親指を咥えて、俺の顔をじっと見る。
「お、お前…そんな…会ったばっかだぞ…?」
ふふっと翔は笑った。
「かずくん、ずっといっしょ」
「えっ?」
「ずーっといっしょ…だよ?」
「翔…?」
そのまま翔が動かないから、俺はずっと翔を抱きしめていた。
腕がしびれても離すことができなかった。
やがて、翔がとろとろと眠る頃。
やっと俺は翔をベッドに寝かせることに成功した。
その髪を撫でながら、さっきの言葉を思い出していた。
”ずっといっしょだよ”
それは遠い昔に約束した言葉…
なんだかそんな気がした。
「おやすみ…翔…」
電気を消すと、俺は翔の隣に潜り込んだ。
温かい翔の身体を、ぎゅっと抱きしめた。
【re:birth end】