第23章 特別短編 その掌
学校が終わったら、校門で翼が待ってる。
登校の時は登校班だからこないけど、帰りは自由帰宅だから迎えに来るんだよね…
先に終わった響を捕まえて、ずっと私のこと待ってる。
ちゃんと時間割を覚えていて、時間通りにくるのは凄いと思うけど…
友達に見られたらまずい。
だから私は校門をダッシュで通り過ぎる。
「わおん!まつ!わおん!」
「ねーちゃん、待てよお!」
うるさいうるさいうるさいっ…
あいつらのせいで、いっつも私からかわれるんだから!
”おまえのにーちゃん、おかしいんじゃねえの?”
”ちがう…ちがうもんっ…”
”何が違うんだよ!嘘つき!”
翼は、私のお兄ちゃんじゃないもんっ
「わーおーん!」
頑張ってダッシュで走っているんだけど、あっさりといつも翼に捕まってしまう…
「だめ。わおん。はしったらあぶない」
「もー…わかったよぉ…」
ぜいぜい息を切らしてるのに、翼は涼しい顔しちゃってさ。
後ろから響がドタドタ走って追いついてくるのを見守ってる。
「やっぱにいちゃん足はええなあ!」
「ふふ…」
響に左手、私に右手を差し出す。
「あい。あーるこ?」
「はぁい…わかったよ…」
翼は…
くるくるぱーだけど、優しい…
世界一、優しい
「ひびき、きょうのごはん、すてーき」
「おおっ!?マジで!?にいちゃん!」
「まじで」
マジでって意味わかってんのかな。
多分、わかってないけど、一生懸命に響に合わせてる。
…翼は優しい…
でも、くるくるぱー…