第22章 特別短編 愛してるよっ
「しっかり直してこいよ」
「ああ。潤を直してくれた先生とは違う先生だけどさ…治るってお墨付き貰えたからさ…」
和也は左足をさすりながら、照れくさそうにしてる。
「そしたら翔の面倒、精一杯見れるじゃん」
「そうなんだよ…あいつ、時々俺が走れないこと忘れるからさ…」
そう言いながら、空港のラウンジではしゃぐ翔を眺めてる。
和也のおかあさんと、潤も一緒になって窓の外の飛行機を見てる。
雅紀は翼が熱を出してしまったから、今日は来れなかった。
悔しがっていたから、羽田まんじゅうでも買っていってやろう。
「…でも、幸せなんだろ?翔と一緒に居られて…」
「ん?まあな…あいつは俺のヨメだからな…」
ふふっと笑うと、和也は翔を呼んだ。
「いくぞ!翔!」
「はあい!かずくん!」
和也のおかあさんが荷物を持っている。
潤はそれをスマートに奪うと、先に立ってあるき出した。
「ま…潤くん紳士…」
「ふ…まあ、当然ですから」
きりっと答える潤の二の腕を抓っておいた。
「いてえ!」
「もう…ばか…」
「か、カズのおかあさんだろお!?」
「ふん」
笑顔で手荷物検査場に消えていく3人を見送った後、ゆっくりと俺達は駐車場に向かった。
「手術、無事に成功するといいな…」
「大丈夫だよ。俺が成功してんだもん」
「だな」
すっと潤が俺の手を握った。
「え?」
「智…」
「なに…?」
「そろそろ、お前のこと…くれねえ?」
「えっ…」
「決まり。じゃあ家帰るぞ!」
「ちょっと…潤っ待って!」
俺の手を引いたまま駆け出してしまった恋人の後を追う。
バタバタと走る潤の背中を見つめていたら、涙が出た。
「潤っ…」
「あー?」
「愛してるよっ…」
いたずらっ子みたいな顔をして、潤は振り返った。
「俺も、愛してるよっ…」
【愛してるよ END】