第22章 特別短編 愛してるよっ
途方に暮れていたある日、雅紀に連れられてある人が訪ねてきた。
「由美さん…!」
「お久しぶりです。大野さん」
その日は日曜日で、休みだった。
雅紀は由美さんを連れて、部屋に来た。
「ちょっといいか。話させてもらっても…」
そう言って、雅紀と由美さんは家に上がってきた。
潤はリビングのソファでぼけっと座っていた。
「よう、潤。腑抜けてんな」
「うるせえな」
「由美さん連れてきたよ」
「…どうも…」
俺も潤も、なぜいまさら由美さんがここを訪ねてきたか不思議だった。
「お久しぶりです、松本さん…今日は、いいお話持ってきました」
由美さんの持ってきた話は、潤の治療費に関するものだった。
「え…?じゃああの金を…?」
「ええ…安藤の残したあの金を、松本さんの治療費にお役立ていただきたいと…そう、小原が言っています」
「そんな…きたねえ金、使えるかよ」
「松本さん…気持ちはわかります。でも…あのお金には…翔くんの…いえ、いろんな方の血や涙が染み込んでます」
「だったら尚更使えねえだろうが!」
潤がテーブルに拳を叩きつけた。
「そんな金…使えねえよ…」
「松本さん…どんな金でも、金は金です…」