第21章 is a rose…
「どう?卓…」
ガオが珍しくロングスカートを履いてる。
女の格好してるよ…
「ど、どうしたの?」
「え?なにが?」
「その格好…」
「ああ…和音にお母さんが男だって誤解されるかと思って…」
「なるほど…」
「今から慣れておこうと思ってね…」
なんとなく動きがぎこちなくて面白い。
「わ、笑うなよ!お前らっ…」
「いやいやいやいや…」
「がお!かわいい!」
翔が叫ぶように言うと、ガオは真っ赤になった。
「ばっ…ばかっ…そんなことわかってるわよっ!」
そう言うと逃げていった。
「かわいいとこあるじゃねえ…ガオったら…」
潤がおかしそうに笑ってるのを、智が隣で能面のようなツラして聞いてるのを俺は見逃さなかった。
こわいです…智…
一通り卓の使い方をマスターしたら、それぞれが仮で音出しをしてみて、だいぶフィットすることがわかった。
「こりゃ、いいハコになるねえ…Gravity」
「だな…当分、俺らのホームにさせてもらおうな!」
そんなこと言いながらパーティーまでの時間を過ごした。
雅紀はその間、侑李と仕事の打ち合わせをしてた。
留学先でも、侑李は雅紀の事務所の仕事してるんだって。
今は、一時帰国してるらしい。
翼はおとなしく翔と一緒に隅のベンチに座っている。
二人ともジュースを飲んで上機嫌だ。
風間とガオは忙しくパーティーの準備をする従業員さんに指示を出してる。
和音は今日は家でお留守番だってさ。
潤は智の機嫌が急に悪くなったのに気づいて、一生懸命ご機嫌取りを始めた。
ふと店内が暗くなり、もうすぐパーティーの始まる時間だと知る。
なんとなくSTORMで集まっていると、翔が後ろの壁を指差した。
そこには大輪の薔薇がいくつも描かれていた。
モノトーンのその薔薇は、薄暗い店内に浮かび上がるようにライティングされていて幻想的だった。
しばらく、俺達はその薔薇を眺めた。
頭に流れるベッド・ミドラーの名曲…
今日は、それを流してやろう。
そう…あの曲をね…