第16章 rebirth
「かずくん…ごはんたべる」
翔が食事を載せたトレーを運んできた。
「ああ…ごめんな。ありがとう」
テーブルにトレーを乗せると、翔は俺をベッドから起こした。
「大丈夫だよ?翔」
「うん…」
にっこり微笑むと、俺の手を取って立ち上がらせた。
テーブルの横に座らせると、翔もその横に座った。
「いたーだきます」
「いただきます…」
昨日、安藤のところに居た間の事を、思い出した。
翔とセックスしようとベッドに入った瞬間だった。
それは何ヶ月も思い出せなかったことで。
正気じゃなかった。
そうとしか思えない程、酷いもの…醜いものだった。
食事も吐き気がして、食べたくはない。
けど、翔が心配そうな顔でみてるから食べないと…
でも箸が進まない…
なんとか柔らかくて匂いの少ないものを選んで食べた。
「かずくん、もういらない?」
「うん…動いてないから、お腹いっぱいだよ」
翔が悲しそうな顔をする。
「もっと…たべる…」
「うん…ごめん。もういいや…」
しょぼんとして、翔はトレイを下げてくれた。
かちゃかちゃと翔が食器を洗う音を聞いている。
まためまいにも似た、記憶の渦が襲ってくる。
「翔っ…ああっ…翔っ…」