第16章 rebirth
「翔…?翔…どこ…?」
「かずくんっ…かずくんっ…」
真っ暗闇で何も見えない。
「翔…どこ…?」
「かずくん…」
そっと翔が手を握ってくれた。
翔の手が震えてる。
「ごめん…なんでもないんだ…」
翔と、セックスしようとした。
だけど…できなかった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
脂汗が噴き出してる。
正気じゃ…なかった。
そう思いたい。
正気じゃあんなことできなかった。
「あ…翔…」
「かずくん…」
「お願い…翔…ぎゅうってして…」
翔の腕に縋り付いた。
縋りつけるものが、それしかなかった。
「翔…愛してる…」
「かずくん…」
「愛してる翔…もっと強く…」
ぐっと翔の腕に力が入る。
「かずくん…だいじょうぶ…」
囁くように翔が呟く。
「かずくん…あいしてる…」
ぎゅっと俺を抱きしめたまま…
ずっとそのまま…
いつまでも、いつまでも俺たちは居た。
懐かしい部屋。
懐かしいソファ。
懐かしい風呂。
懐かしいテーブル。
全てが俺達のものであるはずなのに。
そこは、安藤の部屋にしか見えなくなっていた。