第11章 will
『なんで…そんなこと言うんだよ…』
「え…だって事実だろ」
智のため息がスピーカーから聞こえた。
『…わかった。そっち帰るから…』
5分ほどで智は戻ってきた。
やっぱり病院の中に居たんだ。
智は病室に入ってくると、すっと目をそらしてソファーに座った。
「おい…智」
「ごめん。ちょっと腹痛いだけだから」
「え?お前大丈夫なのかよ?」
「潤に伝染ったらいけないから、ずっと外にいたんだ」
そういってにっこり笑ってこっちを見た。
「ごめんな。心配かけたくなかったんだよ」
…なんだよ。俺知ってるぞ…
その笑顔、嘘ついてる時の顔だ。
「智…そんなに腹痛いなら、医者呼んでやるよ」
「え?」
「薬くらいくれんだろ。腹痛なら」
「いいって。大したことないから」
「遠慮すんなよ」
ナースコールに手をかけた瞬間、智は駆け寄ってきて止めた。
「いいから。本当に」
とっさに俺は手を掴んだ。
「…え?」
「智、本当のこと言えよ。なんで怒ったんだよ」
「…だから」
「なんで嘘つくんだよ。意味わかんねえ」
「なんでもかんでもさ…」
「え?」
「友達だからって、何でもかんでも言わなきゃいけないわけ?」
「そ、そんなことないけど…」
「じゃあさ、いいじゃん。な?」
「智…」
「知らないほうが良かったってことだって、あるんだぜ?」