第11章 will
「潤…?とりあえず、寝よ?」
智がなぜか病室に残ってる。
「いいから帰れよ」
「ちゃんと病院の許可取ったから大丈夫だよ?」
そう言って智はかたわらのソファに横になった。
借りてきたのか、毛布を体にかけた。
「…一人になりたいんだよ。帰れよ」
「朝になったら帰るから…ね?今、外行ったら俺、誘拐されちゃうよ」
おどけて言われたけど、事実だった。
「なんであいつらと一緒に行かなかったんだよ…」
「潤、とりあえず寝ようよ」
そう言って智は毛布を頭まで被ってしまった。
「同情すんなよ…」
呟いてみたけど、もう智は答えなかった。
それから何日も、智は病室に泊まりこんだ。
本当はいけないらしいけど、何故か特別に許可が出てる。
簡易ベッドまで入れられて、智は俺と一緒に生活した。
アパートで共同生活してたから、どうってことない。
だけど俺はベッドの上から一歩も動くことのできない身体で。
全身の怪我が治ったって、歩けるようになるかもわからなくて。
毎日見舞いに来る家族は、最初は智がいることをいぶかしがったけど、そのうち仲良くなって。
段々、智がいることが当たり前になっていった。
そのふにゃんとしたほほ笑みで、看護師さんたちにまで人気があった。
人誑しにも程がある…