第6章 Piece of My Heart
部屋に入ると、和也と洗面所で手を洗って、うがいをする。
俺は別にしなくてもいいって言ったんだけど、和也の長年の習慣らしく、必ずやらされる。
「あい。しょうさん。ぶくぶくー」
塩を溶かした水を俺に差し出す。
「はい。ありがとう」
俺は丁寧に受け取って、それを口に含む。
「ぶくぶくー」
「あーい。ゴロゴロゴロ…」
…こんな姿、恥ずかしくてバンドの奴らには見せられない…
ぺっと出すと、和也が満足気に頷く。
「いいこでした。しょうさん」
ぷっと噴き出すのをこらえる。
先生のマネしてんだな…
和也もうがいをすると、やっとリビングに入れる。
ソファに座ると、和也が膝に乗ってくる。
そのままぎゅっと俺に抱きつくと、親指を口に入れてじっとしている。
あんなことがあってから、こういう時間が増えた。
病院を退院しても、これは続いてる。
俺は和也を横抱きにしながら、それをふんわり抱きしめて、和也が動き出すのを待つ。
この時間が、たまらなく幸せだ。