第6章 Piece of My Heart
俺は音楽をするために大学進学を断念した。
そのことで親父とは溝があって、もう2年実家には行っていない。
成人してからはめっきり用事もないから連絡もしてない。
それに、和也を家の籍に入れるなんて絶対にしないだろう。
考え事をしてたら家に着いていた。
先生とはまた今後話し合うことにして、新宿で別れていた。
和也が最後まで名残惜しそうに、先生の手を握っていたのが切なかった。
「しょうさん?」
和也が繋いでいた手をぎゅっと握った。
「ずっとだまってます」
「あ、ごめんな?淋しかった?」
「ううん。しょうさんの手あったかいです」
そういうと、和也は愛おしそうに俺の手を自分のコートのポケットに入れた。
俺が買ってやった、ネイビーのPコートはよく似合ってた。
和也の白い肌に映えた。
俺はそっと和也の頬にキスをした。
「きゃ…」
ちょっと首をすくめると、嬉しそうに笑った。
「はやく、おうちはいりましょー」
そう言って和也ははしゃいだ。
マンションのエントランスへ二人で駆け込んだ。