第6章 Piece of My Heart
「櫻井さんといることが、和也くんには本当にいいみたいですね…」
泣き顔を先生が向けた。
「え?」
「こんなこと、以前の和也くんはしませんでした…」
またぎゅっと和也を抱きしめると、先生は身体を離して俺に深々とまた頭を下げる。
「ありがとうございます…和也くんに愛を教えてくれて…」
「そんな…先生…」
「ありがとうございます…」
「せんせぇ…?」
和也が先生の頭を撫でている。
「うん。大丈夫だよ?和也くん。先生は嬉しくて泣いてるのよ?」
「あっ…せんせぇ!ぼくもうれしいとなみだでます!先生もですか!?」
「そうだよ…和也くん。人間は嬉しくても涙が出るんだよ?」
「わかりましたっ…わかりましたっ…」
和也が興奮しだした。
こうなると止まらなくて、妙な手の動きをずっと続ける。
俺と先生は、そんな和也をじっと見た。
「必ず…僕が守ります…」
そういうと、先生は深く頷いた。
「お任せします…和也くんは、私の息子同然です…どうか、よろしくお願い致します…」
その後、和也と俺の法的関係について先生からいくつか提案があって…
その案の一つに、和也を俺の親の養子にするというのもあった。
それは無理な話だった…