第5章 Down on me
この事件が意外な展開を見せた。
あの看護師は、和也を拉致したグループの一人だったのだ。
警察病院に侵入してまで、和也がどうなったか確認しにきたのだ。
防犯カメラの映像などから、もう犯人の目星はついていたらしいけど、このことがきっかけになって一斉に逮捕という流れになった。
主犯は、あのボランティアだった。
ここまで和也に執着を見せるなんて…ゾッとした。
俺たちは、逃げるように病院を変えた。
都内の片隅にある病院で、和也は身体を癒やした。
事件のことは先生が処理してくれた。
俺は和也の身体を治すことだけに専念した。
和也がショックから立ち直って、病院を退院する頃には季節は冬になってた。
出会ってから、半年以上経っていた。
久しぶりに施設に行くと、先生方が出迎えてくれた。
「和也くん!退院おめでとう!」
みんな笑顔で和也を迎える。
「ありがとござます」
ぺこりと頭を下げると、先生方は爆笑した。
「凄いっ!和也くん、お礼がちゃんとできるようになったね!」
「しょうさんがおしえてくれましたっ」
得意げに話す和也をみんな、笑顔で見ていた。
「櫻井さん、ちょっとお話が…」
先生がこそっというから、他の先生方に和也を任せて、隣の部屋へ入った。