第5章 Down on me
「どうしました?先生…」
厳しい顔をしていたから、俺から話を切り出した。
「率直に申し上げます。和也くんを引き取ってください。すぐに遠くに行って下さい」
「え…?」
「犯人グループの主犯が出てきました。彼は…実は…」
「え?ちょっと待って下さい…」
「警察幹部の息子なんです…」
「えっ…」
「だから、逮捕されませんでした」
「そんなっ…」
「だから、こちらで自衛するしかないんです…和也くんは、二度とここには連れて来ないで下さい…」
先生は泣きだした。
「それが、和也くんのためなんです…」
「先生…」
「あのひとは…和也くんに対して、すごい執着を持ってます…」
「なんで…」
「”アイツが誘ってくるからだ”、”あんな体してるアイツが悪い”…悪びれもせずにこういいました…」
愕然とした…
そんなこと、平気で言えるなんて…
「主犯は別の人がすり替わって、報道されました。もう…彼が捕まることは無いでしょう。人でも殺さないかぎり…」
先生の目元に暗い影ができて、ゾッとした。
「先生っ…」
「わかってます…わかってますから…」
涙を拭いて、先生は顔を上げた。
「どうか…和也くんを幸せにしてあげてください…」