第5章 Down on me
「あ…申し訳ありませんでした…後できつく言っておきますね…」
「いえ…いいんです…ただ…」
「はい?」
「あの方は、差別意識があるようなので、障害児のお世話はしないほうがいいですね…」
「なにか言ったんですか?」
「”知恵遅れが”って…」
女性医師は黙りこんだ。
「そんなことをいいそうな看護師はいないんですが…」
「でもこちらのユニフォームを着てました」
「わかりました。その件についても、調べますから。申し訳ありませんでした」
「いえ…誰でも持ってる意識だと思いますから…」
「え…?」
「完全にフラットな人間なんて、この世にはいないでしょう?」
「ま…そうですけどね…」
女性医師が去ると、部屋は一気に静かになった。
和也のそばに寄って、顔を見るとすやすやと眠っていた。
これがさっき、あんな重いテーブルを持ち上げた子には見えなかった。
これが障害のある子と一緒にいるってことなんだ…
考えられないようなことが起こる。
でも。
俺の中に、決心が生まれた。
一生。
一生だ。
和也を守る。