第5章 Down on me
「くらいっ…こわいっ…いやだぁぁぁっ…」
「和也っ…もう、大丈夫だからっ…俺がいるからっ…」
「しょおおおっ…しょおおおっ…こわいよおおっ…」
和也が事件の事を言うのは初めてだった。
泣きながら暴れる和也を俺はずっと抱きしめた。
途中で女性医師が入ってきたけど、目で止めて、ずっと俺は和也が落ち着くまで抱きしめていた。
背中を撫でさすって、息が整うまでずっと抱きしめた。
「和也…もうずっと俺が傍にいるから…大丈夫だからね…?」
だんだん泣き声が小さくなって…
その息が、寝息に変わる頃、看護師や医師が部屋に入ってきた。
俺の身体は痣だらけになってて。
顔に傷もついてた。
和也をベッドに寝かせると、そこで俺の治療が始まった。
それが終わると、部屋を片付けてくれた。
「すいません…ご迷惑おかけします…」
女性医師は少し微笑んだ。
「いいんですよ…和也くんは犯罪被害者です。私たちはどこまでもお付き合いしますから…」
その言葉に励まされた。
「さっき間違えて入ってきた看護師の方…」
「え?」
「男性の…」
「ここには男性は近寄らないよう、通達してありますが…」
「え…?でもさっき、いらしたんですよ…この部屋に…」