第5章 Down on me
身体もだんだん、しっかりしてきて体力も戻ってきた。
先生と俺には、相変わらずべったりだったけど、会話なら少しできるようになってきた。
身体の傷も、なんとか治り始めてる。
てんかんの発作の間隔も長くなってきた。
でも…事件について、喋らない。
そのことに触れると、暴れだして手がつけられない。
結局、警察は事件のことを和也から聞き出すことをあきらめた。
泣いて暴れた後は、決まって俺から離れなくなる。
トイレにも行かせてもらえない。
ベッドの上で、ぎゅうっとしがみついて、泣きつかれるまでそのままだ。
退院が決まったその日、和也はまた暴れた。
間違えて、男性の看護師が和也の部屋に入ってしまったからだ。
俺はちょうど売店に行っていた。
戻ってくると、廊下に怒声が響いてきた。
慌てて部屋に駆け込んだら、和也がテーブルを持ち上げて投げるところだった。
あの、テーブルだ。
ベッドの横に置いておくあの大きなテーブル。
「和也っ…やめろっ!」
「うわあああああああっ…」
半狂乱で、男性の看護師に向かっていく。
看護師は和也を抑えこもうとする。
「だめですっ…彼にふれないでくださいっ…」