第5章 Down on me
「和也…早く、俺の家いこう?」
また胸に抱き寄せた。
和也は小さく頷くと、俺に足を絡めてきた。
「はやく、しょうさんのいえ、いく」
俺達は暫くそのまま、抱き合っていた。
和也の体臭が立ち上ってくる。
少し、感じた。
部屋の扉がノックされて、看護師が入ってきた。
「夕飯ですよ」
女性の看護師は、俺達を見てもびっくりしない。
ほぼ毎日、見ている光景だからだ。
「櫻井さん、よろしくおねがいします」
食事用のテーブルをベッドに近づけると、その上に食事を載せた。
「ありがとうございます」
和也が、身動ぎした。
「ありあとー…」
看護師がびっくりして、俺の顔を見た。
「あ…和也くん、どういたしまして…」
初めて口をきいた。
看護師が出て行くと、和也は俺に目を向けた。
「しょうさんのおうち、いきます」
目に少しだけ力があった。
それから和也は、徐々にではあるが治療もさせてくれるようになった。
でも警官は相変わらずダメで。
大人の男性がだめなようだった。
女性の看護師や医師には、身体を触らせてくれるようになってきた。
ごはんも、自分で食べられるようになった。
ひと安心した。