第5章 Down on me
「翔…ソロデビューったって…どうすんだよ…お前が歌うのか?」
「なんだっていい…俳優だっていい」
「俳優!?」
「とにかく金が欲しい」
「…まあ…ちょっと落ち着け…お前、ひどい顔してんぞ…」
そう言って、俺のコーヒーにスティックシュガーを淹れてくれた。
「あいつぁ、セックスはヘタクソだけど、コーヒー淹れるのはうまいから。飲んでみろ」
俺は顔を歪めた。
無言で差し出されたマグカップを受け取って、静かに一口飲んだ。
苦いだけ…
「翔…アイツらには話したのか?」
「いや…何も言ってない。アイツらにはなんにも関係ないことだし。俺、一人の問題だから…」
「ふぅん…」
小出さんはそう言うと、一口コーヒーを啜って、俺の顔を見た。
「翔。とにかくアイツらと一回話せ。俺も考えておくから」
「でも…アイツら巻き込めない…」
「お前が、何しようとしてっかしらねーけど…」
そう言うと、ネクタイをくしゃっと緩めた。
「俺にとっちゃあ、お前ら全員俺の子供みたいなもんだ。だから、全員かわいいんだ…」
「ああ…わかってる…」
「話し合ってこい。俺との話はそれからだ」