第5章 Down on me
次の日、先生がきたので、一旦付き添いを変わって、俺は事務所へ行った。
俺の所属事務所は、弱小だ。
だけど、インディーズの頃から世話になっていたから、俺達は移籍することもなくずっと世話になってた。
ビッグレーベルからCDを出せるのは、ここの小出社長のお陰だ。
事務所の入ってる、小さなビルの階段を昇る。
2階にある事務所の扉を開く。
運良く小出さんはいた。
突然現れた俺にびっくりしながらも、小出さんは応接室に俺を通してくれた。
「どうした?翔。オフだからバイト生活じゃなかったのか?」
「…小出さん…金が要る」
「へ?」
スーツは上質だが、ネクタイがよれてる。
いつもどっか抜けてるおっさん。
だけど、酷く頭が切れる。
「なんだよ…突然…」
最近、白髪のまじってきた短髪の頭を掻いた。
「俺、ソロデビューできねーかな?」
「は?何言ってんだよ?」
「…とにかく大金が居るんだ」
「何するんだよ…」
「それは言えねー。あんたを巻き込みたくないから」
「危ないことすんのか?」
「……」
「言えねーってか…」
「ごめん…小出さん」
バイトの女の子がコーヒーを淹れてきてくれた。
「櫻井さん、怖い顔…」
「みーちゃん、あっちいってな」
小出さんがしっしと手を振る。
「酷い…社長…長生きできませんよ?」
「はいはい。いいから出てけ」
「はーい…」
みーちゃんは、社長の肩をどつきながら出て行った。
また手ェ出したのかよ…