第20章 THE ROSE
思わず目を閉じて、その光景を頭から追い出した。
「ああ…居たよ…」
「…あれは本当なのか…?その…雅紀が、翔を…」
「さあ…俺には、よく…ただ、櫻井さんに薬を打ったのは、相葉さんだった」
目を見開いて風間は俺の顔を見た。
「雅紀…」
「俺には…何がなんだか、ね…」
口元を手で覆って、暫く風間は絶句していた。
「…小原さんは…」
「え?」
「尽く…あいつらの死を見届けてきたんだね…」
「そんなこと…」
風間の目が少し潤んだ。
「…俺、知らなくて…雅紀は、いつ…」
「櫻井さんが亡くなった次の年に…そのちょっと前に、和也くんも…」
「そうか…そうだったんだ…和也、そんなに早く…」
「小出さんも、去年亡くなった」
「えっ…」
「墓は、あの教会だ」
「そうか…随分長生きだったんだな…小出さん…」
「そうだね…」
「墓参り…いかないとな…」
そう呟いた風間の顔は、また微笑みを浮かべていた。
「ガオが小出さんのこと、慕ってたからさ…」
「ああ…そうだったね…」
「あいつ、口は悪いけどさ…でも小出さんのこと、本当に父親みたく思ってたんだ」
どこからか、猫が現れて風間の足に体を擦りつけた。
その猫を見ていたら、思わず聞いてみたくなった。
「あのさ…」
「ん…?」
「ガオさんの…」