第5章 Down on me
俺は、動けなかった。
病室から先生の必死な声が聞こえてくる。
「和也くんっ…先生よ?わかる?」
ドアがパタンと締まった。
「では…私共はロビーにいますので…なにか二宮さんが喋ったらお知らせください…」
警官が頭を下げて去っていった。
俺は唾を飲み込むと、ドアに手をかけて開けた。
和也は、先生に抱きしめられていた。
表情はなかった。
目の横に大きな痣があった。
涙を流していた。
後から後から…
綺麗な涙が溢れていた。
先生は和也を抱えて泣いている。
「和也くん…怖かったねぇ…大丈夫だよ…もう、大丈夫だよ…悪い人、居ないからね…?」
先生の腕に縋り付いて、ただ泣いている和也の目が俺に向いた。
目が見開かれて、和也の口からうめき声が漏れた。
「う……」
俺に向かって腕を伸ばす。
「あぁぁぁぁぁっ…!」
先生の腕を離れて、俺に両手を伸ばしてくる。
「しょおおおっ…!!」
「和也っ…!!」
先生が俺に場所を開けてくれた。
俺は駆け寄って和也を抱きしめた。
「ごめん…和也っ…ごめんなっ…」
「しょうさんっ…しょうっ…」
和也の肩が細くなってた。