第19章 Get It While You Can
とても天気の良い日だった。
店の外に縁台を出して、飼っている猫のミーと一緒に日向ぼっこを楽しんでいた。
近隣の商店の顔なじみの店主が集まってきて、そこで茶会みたいな事になったりすることもある。
裏通りにある店だから、のんびりとしたものだ。
「な~う…」
喉を撫でてやると、ミーは気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
暫くそうやっていると、身体が温かくて眠くなってきた。
ウトウトしていると、道路を行き交う人の声が聞こえてきた。
「あったあった!ここだな…」
「わあ…すっげえ古い店…」
「でも、ここならありそうじゃね?」
「あるかなあ?」
「あっ!ねこちゃんです!」
「こおら、翔!おじいちゃん寝てるだろ?邪魔すんな」
「かあずくん…ねこちゃんさわりたい!」
「だあめだって!起きちゃうだろ?」
「まーまー和也…そう言うなよ。触らせてやれば?」
「雅紀…おまえなあ…」
懐かしい夢…?
これは…夢なのか…?
「avidのレコードあんのかな…」
「でも、見たとこジャズばっかりじゃね…?」
「ここは智に一緒に来てもらったほうがいいな…」
「だな…こういう時は、物怖じしない潤も一緒に…」
「もお!社長!何いってんですか…あなたが一番物怖じしないでしょう…」
「るせー!侑李、それが社長に対する口の利き方か!」
「はいはい…」
声の主を見たいのに、目が開けられない。
身体に力が入らなかった。
「じゃあ、また来ますか…」
「だな、よし。行くか」
「じゃあ、車回してきます」
「頼むな、侑李」
「ねこちゃん~…」
「くおら!いくぞ!翔!」
段々と、声は遠ざかっていく。
まって…
待ってくれ…
「なあん…」
ミーが膝の上に立って伸びをした。
「あ…」
柔らかい足の感触で、目が覚めた。
慌てて周りを見渡したが、もう誰も居なかった。
「やっぱり…夢…?」
ミーが膝から飛び降りて、散歩に出かけていった。
ふと手を見ると、手のひらに何か置かれていた。
「なんだ…?これ…」
小さな、小さな…
どんぐりだった