第1章 My Baby
かずなりくんが離れないから、警察と一緒に施設の人の話を聞いた。
かずなりくんには親がいない。
近くの施設の寮からここに通っているそうだ。
自閉症で、ときどきてんかんの発作を起こすらしい。
厄介だから障害者の職場でも働けなくて、施設の臨時職員をしているという。
幼く見えたけど、18歳だそうだ。
「おにいさん、あそぼ」
黒いビー玉みたいな目で俺を見る。
この少年は、8歳くらいで時がとまっているそうだ。
少し長めの黒い髪を撫でる。
気持ちよさそうに目を閉じた。
なんだか犬みたいだ。
口の端が笑ってるみたいに上がってる。
白い肌は女の子みたいで。
じっと俺を見上げてる。
「おにいさん、さみしい?」
「え?」
心を抉られるようだった。
俺はこの時、恋人と別れたばかりで。
寂しさに身悶えるようにして毎日を過ごしてた。
なんでわかったんだろう。
「さ、さみしくないよ?」
「嘘をついてもわかります」
眉間にシワを寄せて俺を見た。
ぎゅっと俺を抱く手に力を入れた。
Tシャツの隙間から、石鹸のいい匂いが漂ってきた。
この不思議な少年に、俺の心はわしづかみにされた。