第1章 My Baby
「その辺にしときな…」
声を掛けずには居られなかった。
そこは障害児が通う施設の入り口で。
酒に酔った未成年が、一人の少年をボコボコに殴ってた。
「殴ってお前になんの得があるんだ?」
「うっ…うるせー!」
今度は怒りの矛先が俺に来た。
ひょいとかわすと、その未成年は車道に飛び出した。
運悪く、ダンプがきてそいつは跳ね飛ばされた。
「あーっ…とびましたっ…とびましたっ…」
殴られた少年は手を叩いて喜んでいた。
「かずなりくん?こういうときはよろこんじゃいけないんだよ…?」
その少年は、俺にまっすぐで綺麗な瞳を向けた。
「おしえてくれて、ありがとございます」
そういうと、俺にぽすっと抱きついてきた。
「なに…してんの…?」
「おにいさん、すきです」
「あ、そ…」
そのまま、俺は携帯で救急車と警察を呼んだ。
お蔭でバイトには行けそうにもなかった。
周りにたくさんの人がみていたから、俺達は疑われもせず、その場で帰された。
かずなりくんは、俺に抱きついたまま離れない。
「彼への暴行の件はどうされますか?」
警察にそう聞かれたけど、俺は答えようがなかった。