第18章 Buried Alive In The Blues
それから一時間ほど雅紀は苦しんで…
やっと沈静化したころにはどっぷりと日が暮れていた。
「お前らもうホテルに戻れ…」
「でも、小出さん…」
「何かあったら連絡するから…」
ドクターたちが居なくなった部屋はガランとしていて…
やせ細った雅紀が、疲れ切った表情でベッドに転がってる。
「…して…」
「え?」
雅紀がうつろな目を開けていた。
「どうした?雅紀…」
ベッド際に寄ると、雅紀はすっと腕を上げた。
「ゆるして…」
その眼をしっかりと開いて、雅紀は天井を見つめた。
「俺を…許して…」
その手は、誰かに向かって差し伸べられていた。
「雅紀…」
その目は、透き通ってキラキラと輝いた。
にっこり笑うと、ぱたりと腕が落ちた。
「ああ…歌が聞こえるよ…ブルースかなぁ…」
すぅっと息を一つ吸う
そのまま息を吐き出して目を閉じた
「雅紀…?雅紀っ…」
智がベッドに駆け寄って雅紀の手を握る。
「返事してっ…?雅紀っ…」
潤もベッドに駆け寄って、雅紀の肩を揺すった。
「雅紀っ…おいっ…」
そのまま…雅紀は二度と目覚めることはなかった
「随分、小さくなっちゃったな…」
潤の膝の上には、白い布に包んだ骨箱が載っている。
長い飛行機の旅を終え、日本にやっと戻ってきた。
アメリカでなんとか火葬できるところを探して、雅紀を骨にして帰ってきた。
雅紀の家族は…雅紀と関わることを拒否したからだ。
翔のことがあってから、どこに引っ越したかもわからない。
骨は、俺が預かることになった。
侑李と同じ墓地に葬ってやるつもりだ。
終わった…
なにもかもが終わった…
そう感じた。