第17章 Pearl
潤が車を降りて、後部座席のドアを開けた。
「智、大丈夫?」
心配そうに覗きこんだ瞬間、和也が潤に抱きついた。
「じゅんくん…ありがとぉ…」
そのまま、和也は車を飛び出した。
「和也っ…」
慌てて潤が追いかけたけど、和也の足は早かった。
俺も追いかけたけど、すぐに和也を見失った。
「もしかして…世田谷の家…」
「あ…」
潤と俺はすぐに車に戻って世田谷の家に向かった。
部屋につくまでに、美穂さんに連絡して部屋の鍵を持ってきてもらうことになった。
和也の今日持っていたカバンには、翔の部屋の鍵が入っていた。
ずっと、そのままになっていた。
「鍵…回収しとけばよかった…」
潤が呟いた。
マンションに着くと、客用駐車場で美穂さんと待ち合わせた。
美穂さんは既に到着していた。
「すいません、無理を言いまして」
「いいえ…いいんです。早く行きましょう」
部屋に上がると、扉には鍵がかかっていた。
「和也来てないのかな…」
美穂さんが鍵を開けて中に入る。
翔の部屋は、まだ翔の匂いがした。
部屋にはいると、廊下の突き当りがリビングになっている。
そこに入ると美穂さんが呼びかける。
「和也くん?居るの?」
返事はなかった。