第17章 Pearl
病院から帰る車の中で、潤が和也に話しかけた。
「明治神宮行こうか?」
和也はぱっと目を輝かせて頷いた。
「よし、神様のとこ行こうな!」
明るく振る舞ってるけど、潤は相当参っていた。
和也をどうにか元気にしてやりたいと願っている。
でも俺にはわからなくなっていた。
何が和也にとって幸せなのか…
…このまま…
こんなことを思う俺は、酷いやつなのか。
胸が苦しい。
和也が俺の腕をぎゅっと掴んだ。
「めめ…はれます…」
「え…?」
いつの間にか、俺は泣いていた。
和也の手が俺の涙を拭っていった。
「ごめん…和也…」
和也は黙って俺を抱きしめた。
「え…?」
「さとくん…ありがとぉ…」
「和也…?」
和也はじっと動かない。
また細くなった身体。
それでも心臓は力強く脈打ってる。
「和也…いくな…」
「智、どうしたの?」
潤が運転席から声をかける。
「なんでもない…」
そうは言ったけど、俺の声は震えていて…
潤が信号で止まってこちらを振り返る頃には、涙が止まらなくなってて。
「智…」
明治神宮の駐車場につくまで、俺は和也に抱かれていた。