第17章 Pearl
「寒くない?和也」
こくりと頷くと、俺のコートの裾を掴む。
「じゃあ、行くよ」
掴んだ手を繋いでやった。
素直に、和也はついてくる。
和也が外に出るのは久しぶりだった。
お正月で浮かれた街を歩く。
でも俺達には関係ない。
まるで他人事で。
翔が居なくなって半年しか経っていないことを痛感した。
新宿に出て、小田急線に乗り換える。
和也が俺の顔を見る。
「ん…?あ、そうか。世田谷の家って小田急線だっけ…」
切符を無くさないように和也のポケットに入れてやる。
ぽんぽんとポケットを叩くと、和也は俺の手を握った。
早く行こうとばかりに、歩き出した。
「和也…行くのは明治神宮だよ?」
立ち止まって俺の顔を見上げる。
「かみさま…」
「そうだよ。世田谷のお家にはいかないよ?」
多分、和也はそこから動かなくなるだろうから…
だから俺達は一度も連れて行ったことがなかった。
和也にとって、いい思い出のある場所だろうけど…
翔を思い出して、辛くなるだろうとも思った。
俺達でさえ、まだつらい。
ガオを喪って、立て続けに翔まで喪って…
雅紀はまだ帰ってこれない…
帰ってこられるかもわからない…