第17章 Pearl
ソファで座ったまま一日を終えてしまうこともあった。
今日も和也はソファで膝を抱えて座ってる。
「和也…初詣いこうか」
不思議そうな顔をしてる。
そっか…初詣がわからないのか。
「神様のところ、行こうか」
和也の顔が変わった。
腕を俺に伸ばしてくる。
「ん?どうした?」
和也の傍に行くと、腕を痛いほど掴まれた。
「和也?」
「…かみさま…」
「和也…」
そのまま和也は俺の顔を見て、視線を外さない。
「行きたいの…?」
こくりと頷くと、真剣な顔をしてる。
「じゃあ、行こうか…」
港区のマンションは引き払ったけど、世田谷のマンションはそのままにしてあった。
引き上げてきた荷物の中から、和也のものをより分けてここにはこびこんである。
翔のものは、捨てることができなかった。
ご両親がそれをさせなかった。
今はすべて、世田谷のマンションに置いてある。
荷物の中に、和也のコートがあった。
紺色のピーコート。
色白の和也によく似合った。
美穂さんという、翔の義理のお母さんが、形見分けにと色々おいて行ったなかに、翔のマフラーがあった。
それを和也に巻いてやる。