第16章 The Last Time
それから、風間は二度と連絡してこなかった。
いつの間にか、和也が俺の傍に座ってた。
「和也…」
「はぁい」
微笑みながら、返事をする。
「日本に、帰ろうか」
そう言ったら、目を見開いて嬉しそうな顔をした。
「また、音楽一緒に作ろうな…」
「はあい!」
元気よく答えて、俺の胸に飛び込んできた。
ぎゅうっと俺に抱きつく。
俺もぎゅっと和也を抱きしめた。
「和也…愛してる…」
「しょうさん…ぼくも…」
それから、なんだか涙が出てきてとまらなくて。
和也が俺の顔を心配そうに覗きこんで、ずっと涙を拭いてくれた。
とめどなく溢れてくる、この思いはなんだろう。
安堵とか、そういうものじゃない。
ただ、終わった。
そう思った。
終わったんだ。
その日、チャイナタウンの片隅で起こった殺人事件は、地元紙で小さく報じられた。
蛇頭とドラゴンの抗争ということで、片付けられてた。
小出さんの名前は、どこにも出ていなかった。
小原と翼は夜遅くになってホテルに現れた。
疲れきった顔をしていた。
事件の後処理でもしていたんだろうか。