第16章 The Last Time
タクシーに揺られながら、ガオの顔や先生の顔が浮かんだ。
失ったものの大きさ。時間。
それらが全て取り返せるとは思わない。
けど…
これで終わりだ。
全て終わらせるんだ。
そのために、俺の命が無くなっても構わないと思った。
和也が、これから先、幸せに暮らせるのなら…
きっと皆が和也をなんとかしてくれる。
小出のおっさんがひきとってくれるかもしれない。
潤と智が面倒見てくれるかもしれない。
榎本さえ死んでしまえば、和也の幸せを邪魔する奴はいなくなるんだ。
あの男が…
全てを狂わせたんだから…
武器も何も持っていない。
でも、殺し方は決めていた。
あいつの首を締める。
ガオにしたように。
あいつも苦しめばいい。
死んでもなお、泣いているガオ…
きっと今も、俺達を心配してその辺に漂ってるんだろう。
「ごめんな…ガオ…」
最後まで…きっと俺の代わりにアイツを殺そうとしたんだよな…
巻き込んでごめん…
早く殺せばよかったんだ…
もっと早く。
そしたらこんなことにならなかった。
罰を与えるなんて、傲慢なこと、考えなきゃよかった…