第16章 The Last Time
和也が落ち着くと、入室を許された。
暫く休ませたら帰るように言われた。
アメリカの病院って、ドライだよな…
昏昏と眠る和也を眺めていたら、翼が戻ってきた。
「もうペイも済んだから、帰ろう」
車から毛布を持ってきてくれて、和也を包んだ。
「ほら、お前が抱いてやれよ」
「なんかその言い方恥ずかしいからやめろ…」
「すまん…暫く日本語喋ってなかったから…」
頭を掻く姿が、かわいかった。
ふふっと笑うと、翼も笑った。
和也を抱いて車に戻る。
翼が扉を開けてくれて、乗り込む。
「そんなに…」
「え?」
「そんなにお前たちの中で、苦しい思いになってるんだな…」
「翼…?」
「悪かったな…本当に…」
「…気にするなよ…」
「わかってたつもりなんだけどな…あん時のお前ら見てるんだから…」
翼はドアを閉めると、運転席に乗り込んだ。
「今日はしっかり見張っとくから…ゆっくり和也とホテルで休んでろよ」
「ああ…頼むな…」
和也がこんな調子じゃ、今日の夜は出られないかもしれない。
風間が先に榎本を捉えたら…
その先、どうなるか安易に想像がついた。