第16章 The Last Time
「おにいさん、ぼくにいたいことする…」
そう呟いた。
「和也…いいから…もう思い出すな…」
「おにいさん、おうちにかえしてくれない…!」
「和也っ…!」
和也の身体がびくっと強ばった。
「うーっ…うーっ…」
「和也…?」
口から泡を吹いて、和也がシートに倒れこんだ。
「てんかんだっ…!」
久しぶりの発作に焦った。
「翼っ…!病院っ…!」
タオルを掴んで、無理やり顎を開かせて噛ませた。
薬なんて持ち歩いてなかった。
「どこでもいい!近くの病院にっ…!」
翼がハンドルを切る。
揺れる身体で、和也を支えた。
「悪かった…」
呟く翼になにも返せなかった。
ごめん…
和也…
やっぱりあいつ、殺しておけばよかった…
もう、怖い思いさせないから。
もう、あいつ居なくなるから…
ごめんな。
ごめん…
病院につくと、ERに入れられた。
緊急性があるからと、優先された。
運び込まれた処置室を、翼と二人で眺めていた。
「俺、小原に連絡してくる」
「ああ…でも、大丈夫だ。もう戻ってくれ」
「でも…翔…」
「英語はできるから…大丈夫…」
「大丈夫ってツラかよ…残るから…手続きは任せてくれ…」
翼が去ると、また窓から和也を眺めた。
ごめん…和也…