第16章 The Last Time
「本当に…翔のこと、好きなんだな…」
「え?」
「あの時、俺達の車の前に飛び出して来た時は、びっくりしたよ…」
「そうなんだ…」
「お前が高熱で動けなくなってて、和也がな、飛び出してきたんだよ…俺達の車の前に…」
”しょうさんをたすけて”そう和也は叫んだと。
「…腕の傷は…?」
「ん…指が…何本か動かない…」
「そっか…」
翼は前に視線を向けたまま、少し俯いた。
「でも…お前は生きてるから…」
「うん…」
「生きてるんだからさ…」
「うん…」
「だから…無茶するなよ…」
「…わかってる」
翼は、なんか感づいてるのか…
いや、それをいうなら小原もか…
「大丈夫だって…」
「そうか…?お前、なんか決心してんだろ…?」
「…そんなこと…」
「ガオって人、殺されたからか?」
びくっと和也の身体が強ばった。
「翼…」
「榎本のこと、殺そうとしてんだろ?」
「翼!」
和也が震えだした。
「和也…大丈夫だから…」
「ごめん…和也…」
翼がこちらを振り返った。
「和也…大丈夫…榎本はこないから…」
「いや…いや…」
和也は俺の腕の中で、小さく首を振り続けた。