第16章 The Last Time
風間の居たホテルにつくと、小原と翼がフロントに何やら問い合わせに行った。
俺と和也はそれをぼんやりと眺めていた。
突然、きゅっと俺の手を握る和也。
顔を見ると、俺を見上げている。
「どうした?和也」
「…しょう…」
「うん?」
「いかないで」
硬い声だった。今まで聞いたことないような。
「…和也も、一緒だよ?」
「いや…いかない。しょうもいかない」
こんなに断定的に物を言うのは初めてのことで…
「どうしたの…?なにか嫌なことあった?」
「しょう…まもる」
和也がぎゅっと抱きついてきた。
「ぼく…まもる…」
「和也…」
小さな身体が震えていた。
「どうしたの…ずっと傍に居るから…大丈夫だから、ね?」
「ぼくがしょうをまもる」
思いつめた声だった。
ゆっくりと腕を解くと、和也は俺の顔をまた見上げた。
「どこにもいかない。おうち、かえろ?」
そう言い切ると、和也は微笑った。
透明な、笑顔。
透度の高い湖の底みたいな笑顔だった。
久しぶりに見た笑顔に、心臓がどくんと動いた。
「これが終わったら…帰ろう?」
頬を包むと、ぽろりと瞳から涙が落ちた。