第16章 The Last Time
「な?いい情報だろ?」
「…居場所はわかってんの?」
小原の声が硬い。
「いや…その後、撒かれた」
「え…」
「ドラゴンの奴らが噛んでる」
小原が翼の横顔を見た。
「ドラゴン…」
「な?おあつらえ向きだろ?蛇頭とドラゴン」
翼がいうには、ドラゴンとは蛇頭と敵対する日本のチャイニーズマフィアの組織で。
アメリカ本土でも、華僑社会を巻き込んでたまに抗争してるらしい。
「ヘタしたら、榎本と風間のせいでドンパチ起こるぞ…」
なにか遠い世界の話に思えた。
なんで榎本が中国ヤクザと関係してるんだか、皆目見当もつかなかった。
「榎本の父親だな…」
小原がぎりっと歯噛みした。
「あいつの父親が、日本のヤクザとつながりがあったんだ…」
マフィアは横の繋がりが強い。
息子を庇護するために、あいつの父親は一体どれだけの情報をヤクザに渡したのか…
今、現在も榎本を庇護するほどの何を握らせたのか…
それは、もうどうでもいいことで…
蛇頭とドラゴンが火花を散らす前に…
風間が榎本を見つける前に。
榎本を、殺さなきゃならない。