第15章 Flower in the Sun
次の日の早朝、風間のマンションを訪ねた。
「ガオ…どうしたの…」
ここに訪ねてきたことはないから、風間はびっくりしてた。
新宿の、ごちゃごちゃした場所にぽつんとあるマンション。
今の羽振りなら、こんなとこ住む必要もないのに。
貧乏性は幼いころ植え付けられた。
今でも脱却できないんだ。
「…俊」
「え…?」
「事務所の鍵よこせ」
「…俺も行く」
「だめだ」
「なにするつもりだよ」
「なんでもいいだろ」
風間がぐいっと私を抱きしめた。
「行かせない…」
「離せ…やることがあるんだ」
「だめだ…」
「私がやらなきゃいけないんだ」
「智津!」
痛いくらい力が入った。
「もう、一人じゃ行かせないから」
「ごめん…」
手に持ってたカバンで風間の頭をぶん殴った。
ずるりと崩れ落ちていく身体を支えて、床に寝かした。
玄関にかかってた鍵束を持って走りだした。
ごめん、俊…
アンタには迷惑かけるけど…
でも、ごめん。
これはどうしてもやらなきゃいけないんだ。
アタシの仕事なんだ。
走る手に力が入った。
息が詰まる。
新宿の朝の空気は淀んでて…
懐かしい空気だった。
これが終わったら、雅紀を連れて海外に行こう。
ちゃんと治してやるんだ。
潤と智も連れて行ってやろう。
そうなったら、翔と和也も連れて行きたいな…
皆で、雅紀を治してやろうね…
そして、皆で音楽また作ろう。
また、皆でバカ笑いしよう。
酒も飲もうね。
ああ…楽しみだ…