第4章 Half Moon
「櫻井さん…でも、こういうことは…」
そういうと額に手をあてて、溜息をついた。
「もし、真剣なのでしたら、和也くんが成人するまで待って下さい…」
「え?」
「こういうことは実績が必要なんです。和也くんにとって、櫻井さんが必要不可欠であって、和也くんへの理解が深いと認められないと、監護権は取れないんです」
「監護権…」
「今は未成年ですから、ハードルがいろいろ高くて、どんなにお金を積んでも法的には無理です。ましてやあなたは二十歳…」
先生の眉間の皺が深くなる。
「どんなに愛したって、乗り越えられない壁はあるんです…和也くんは、孤児で障害者なんです…」
障害者…
孤児…
「だから、法律で手厚く保護されてるんです…昨日や今日、お世話したからっておいそれと一緒には暮らせないんです…」
「はい…」
「しょおさん…」
和也が俺を覗きこんでる。
床に膝をついて、俺の膝に手をついて。
目が潤んでいた。
「大丈夫だよ?わかるだろ?先生は俺をいじめてるんじゃないから…」
「うんっ…わかるっ…」
ぶんっと大きく顔を縦に振った。
「和也くん…」
先生が涙ぐんだ。
「こんなに…」
そのまま先生は喋らなくなった。