第15章 Flower in the Sun
新幹線を降りて、在来線に乗り換える。
緑深い山奥へ、列車は走っていく。
渓谷の傍の駅で降りると、ほとんど人影が見えなかった。
無人の駅から出ると、駅前のたばこ屋のおばあちゃんがこちらを凝視してた。
珍しいんだろうな…
こんなところに若い男が一人って。
それでも気が急いていた俺は、調査書に書いてある住所の近辺までスマホのナビを見た。
「嘘だろ…」
道なんてなかった。
どうやってここ行けっていうんだろ…
仕方なくたばこ屋のおばあちゃんのところに聞きに行った。
「すいません。稲芽ってところはここからどうやって行けばいいですか?」
「はぁ…?あんたそんなとこなんの用だ?田んぼしかないよぉ…」
「あ…えと、遺跡の調査です」
全然説得力がなかった。
くるくるパーマに茶髪。
革ジャンにはスワロをつけてる。
ジロジロみられてたけど、おばあちゃんの顔が緩んだ。
「なぁんだ。学生さんかあ…」
そう言って笑うから、拍子抜けした。
愛想笑いを返しておいたら、近所のおじいさんを呼んでくれて、軽トラに乗せてもらえることになった。
「あのへんはマムシでるから、きをつけるんだよぉ」
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げると、にこにこ見送ってくれた。