第15章 Flower in the Sun
泣きそうになりながら返事をすると、俺の首に腕を回した。
「しょうさぁん…すき…です…」
そのまま俺の唇に触れた。
水音を立てて離れていく。
「どこにも…いかないで…」
最近、こればかり言う…
「どこにもいかないよ…ずっと、一緒だよ…」
「かず…ひとりいや…」
子供の頃に帰ったように、自分を名前で呼ぶ。
「いかない…いかないよ…」
「しょうさん…」
顔を離して、じっと俺を見る。
両手で俺の頬を包み込むと、儚く微笑んだ。
「和也…お前のほうが…どっかいきそうだよ…」
不安に胸がぎゅっと苦しくなった。
「いかない…いかない…」
そう言って泣きじゃくるから。
抱きしめるしかなかった。
侑李の死からこんなことばかり言ってる…
お互いが、お互いの前から消えることを恐れてる。
俺達の不安は、日に日に増していくばかりで…
あの空白の5年は、今だに俺達の間に影を落としてて。
すぐに埋められるものじゃないってわかってるけど、それでもなにかしていないと不安で。
身体を重ねることで、その不安を解消しようとしてる。
一時的にしか、安心できないのに…