第15章 Flower in the Sun
風呂からあがると、台所へ行った。
冷蔵庫から缶のビールを取り出すと、そのまま煽った。
いつもなら染みこむような旨さを感じるのに。
何も感じない。
酔えない、と思った。
徐ろに、シンクについている小さな引き出しを開けた。
そこには、雅紀の残していった白い粉が入っていた。
一度だけ、雅紀が吸っているのを見たことがある。
雅紀がやっていた通りに、再現した。
吸い込むと、頭がクラクラした。
目の前にぱちぱちと火花が散ったかと思うと、急に何もかもがどうでも良くなった。
楽になった。
「ふっ…あははっ…バカみてえ…」
なんだよ…これ…
めちゃくちゃじゃねえか。
和也さえ居ればいいって思ってたのに。
こんなにも俺の心は脆くて。
足元が崩れていく。
立っていられなくなって、床に寝転んだ。
「あははは…はははっ…」
笑いが止らない。
涙と鼻水で、顔がぐしゃぐしゃになる。
「しょ…う…」
キッチンの入り口で立ちすくむ和也が見えた。
「和也、おいで。いっしょ、しよ?」
そういうと、和也は頷いてパジャマを脱いだ。
白い身体から、妖艶な赤い渦が見えた。