第14章 Coo Coo
「榎本」
扉を開けると、犬みたいにアタシを待ってる。
「ガオ…」
食べ物を載せたトレーを床に置くと、アタシの顔をみてる。
「いいよ。食いな」
そう言うと、嬉しそうな顔をして食事を始める。
床で食事をしてる惨めな姿なのに、ちっとも嫌がってない。
食べ終わると、私の靴を舐める。
「はは…アンタ、プライドどこいったの?」
「ないよ…最初からそんなもの…」
「よく言うよ…」
靴を脱いで、素足になった。
「ホラ、舐めろよ」
榎本は嬉しそうな顔をすると、アタシの足をピチャピチャと舐め始めた。
別になにも感じない。
でも、その舌の感触が少しずつ侵食してくる。
脳髄に。
「もう、やめろ」
そう言って足を引くと、捨てられた子犬みたいな目をする。
メガネを取り上げると、その唇にかぶりついた。
今、アタシは榎本を性玩具にしてる。
それがこいつにはお似合いだ。
生きながら殺しておく。
死にたいと願っているコイツを、この世につなぎ留めておくんだ。
そうして、死んだ後で事実を知って苦しめばいい。
生きてても、死んでても苦しめばいい。
それほど、コイツが憎かった。